藤兵衛取っさ

 

 

 

昔、藤兵衛という飛脚がおった

 

ある日のこと

 

いそいでいたのでいつもと違う裏道を走っていった

 

そして、近くに沼が見えてきたのでそこで少し休むことにした

 

そうすると沼の方から

 

 

 

とうべいとっさ

 

 

とうべいとっさ

 

 

と、声がした。すると藤兵衛のからだがうごかなくなったんだと

 

 

また、しばらくして

 

 

とうべいとっさ

 

 

とうべいとっさ

 

 

 

と聞こえるので、藤兵衛は負けじと

 

 

 

おまえもとっさ

 

 

 

とかえしたのだった。

 

だが沼の方から一段と大きな声で

 

 

 

 

とうべいとっさ

 

 

とうべいとっさ

 

 

 

とこえがするのでまけじと

 

 

おまえもとっさ

 

 

とうべいとっさ

 

 

とうべいとっさ

 

 

おまえもとっさ

 

 

とうべいとっさ

 

 

おまえもとっさ

 

 

とうべいとっさ

おまえもとっさ

とうべいとっさ

おまえもとっさ

とうべいとっ…

 

と、沼の方からの声が突然切れるのと同じくして

 

藤兵衛の体のかな縛りもとけたのだった

 

藤兵衛は急いで沼から離れて

 

近くの村についたときは

 

藤兵衛の髪の毛は真っ白になっていた

 

次の日

 

村の人達と沼に行って見るとそこには

 

大きな銀魚が浮かんでいたそうだ

 

金魚じゃなくて

 

銀魚が浮かんでいたんだと

 

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