蚕になった姫

 

 

昔々あるお殿様に一人の姫んこがいたんだと

姫はお殿様の子供として幸せに暮らしていたのだが早くに母君をなくしていたんだと

そこでお殿様は後妻をもらったんだと

だが、その後妻というのは

姫んこが邪魔で邪魔でしかたなかったんだと

そこで父親の留守中に後妻である継母が

姫を庭の桑の木の下に連れ出して生き埋めにしたんだと

お殿様が帰ってきて姫んこの姿がみあたんないので

継母に聞いてみたんだと

そしたら継母は

おらしらねぇ

と答えるので父が姫を探すと


桑の木の植わっている地面から湯気がもくもくたちあがっていたんだと

お殿様が根元を掘ってみると姫んこが出てきたんだと

お殿様は自分の留守中に姫んこが、また危険な目に会うかもしんねぇ

と考えたので、

姫んこが埋められていた桑の木で舟を作って

桑の枝葉で姫の姿を覆い隠して

誰かいい人に拾われてくれ

と願い舟を河に流したんだと

姫んこが流れていた川には、おばあさんが洗濯していたんだと

おばあさんが川上をひょいと眺めると舟が流れてきたんでひきあげたんだと

そしたら、桑の葉にかわいい姫んこが乗っていたので

おじいさんを呼んできて、舟と一緒に家に連れて帰ったんだと

二人には子供がいなかったので、姫んこはかわいがられて育ったんだと

ところがある日のこと

姫んこが急に熱をだして、ころっと死んでしまったんだと

おじいさんとおばあさんは翌日に埋めることにしたんだと

次の日に姫んこの遺体に近寄ると、姫んこの顔から体から全身が見たこともない虫に覆われていたんだと

二人は

姫んこにつく虫だから大事にしなければ、なにか食わせなければなんなぇ

と外に出て色々な木や葉っぱを持ってきたが、どれも食わなかったんだと

そしたらおばあさんが

姫んこが乗ってきた舟はどうだべ

というので、舟を持ってくると虫は葉っぱを食べ始めたんだと

これでその虫は桑を食べることがようやくわかったんだとな

そしたらその虫がおしりから糸を出して繭を作ったんだと

ためしに、その繭から糸をとってみると、丈夫できれいな糸が取れるようになったんだと

 

そんなある日、お殿様が都に行った時にきれいな布を献上することになったんだと

お殿様が国に帰ってつくらせたが、あまり良い糸が無く困っていたんだと

そこで国中にお触れを出したところそれを聞いたおじいさんが糸をお殿様に差し出したんだと

さっそくその糸で布を織るとなんとも言えぬ美しい布が織れたので

お殿様はこの糸はどのようにして手に入れたか聞いたんだと

おじいさんは、今までのことを全部話したんだと

それを聞いたお殿様が

あぁ、姫んこが助けてくれたんだのぉ

と、おじいさんに褒美を与え、都に布を持って行ったんだと。

 

その布を織る時に使った糸が絹で

姫んこは蚕になってお殿様を助けたんだってなぁ

 

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